国立西洋美術館では、「印象派の殿堂」ともいわれるパリ・オルセー美術館所蔵の傑作約70点を中心に、国内外の重要作品も加えたおよそ100点による「オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語」が開催されています。
オルセー美術館の印象派コレクションがこの規模で来日するのはおよそ10年ぶり。さらに今回、若きドガの才気みなぎる代表作《家族の肖像(ベレッリ家)》が日本で初めて展示されます。マネ、モネ、ルノワール、ポール・セザンヌらの名品も一堂に会し、室内をめぐる印象派の画家たちの関心のありかや表現上の挑戦をたどります。

印象派といえば、移ろう光や大気とともにとらえた戸外の風景がまず思い浮かぶのではないでしょうか。とはいえ、彼らの最初のグループ展が開かれたのは、近代化が急速に進む1870年代のパリ。この活気に満ちた大都市や、その近郊における現代生活の情景を好んで画題とした印象派の画家たちは、室内を舞台とする作品も多く手がけました。

エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》 1858-1869年 油彩/カンヴァス オルセー美術館、パリ © photo:C2RMF / Thomas Clot

 とりわけ生粋のパリ市民であったエドガー・ドガは、鋭い人間観察にもとづいた、心理劇の一場面のような室内画に本領を発揮し、一方でピエール=オーギュスト・ルノワールは、穏やかな光と親密な雰囲気をたたえた室内情景を多数描きました。ほかにもエドゥアール・マネやクロード・モネ、ギュスターヴ・カイユボットらが、私邸の室内の壁面装飾を目的として制作した作品も少なくありません。印象派と室内は、思いのほか深い関係を結んでいたのです。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》 1892年 油彩/カンヴァス オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

展覧会は第一章「室内の肖像ー創作の空間で/モデルを映し出す部屋で」第二章「日常の情景ー気晴らし、夢想、親密さ」第三章「室内の外光と自然ー取り込まれる風景、植物」第四章「印象派の装飾―室内への新しいまなざし」の4つで構成されています。
オルセー美術館のほか、国立西洋美術館やフランスのジヴェルニー印象派美術館など国内外に所蔵される需要作品も一堂に展示されています。室内というテーマを通して印象派のもうひとつの魅力をぜひご堪能ください。

2026年2月15日(日)まで。

https://www.orsay2025.jp