中世から20世紀半ばに至る西洋美術の流れを概観するコレクションの形成を目指し、優れた西洋美術作品の収集に努めている国立西洋美術館は、このたび、ラヴィニア・フォンターナ(1552-1614)の絵画《アントニエッタ・ゴンザレスの肖像》とルイ=レオポルド・ボワイー(1761-1845)の絵画《トロンプ・ルイユ:クリストフ・フィリップ・オベルカンフの肖像》を購入し、9月14日(土)より、常設展示室で公開しています。
ラヴィニア・フォンターナは16世紀後半から17世紀初めにかけて、イタリアのボローニャとローマで活動した画家。美術史上初めて本職の画家として成功を収めた女性であり、18世紀以前に活動した女性画家のなかでは最多の現存作品が知られています。女性芸術家の作品の収集を積極的に進めている同館にとって、この作品は重要な追加となります。
画中の少女と父、そして兄弟姉妹の数人は、極端に毛深いという特異体質の持ち主でした。そのため一家はきわめて有名な存在となり、通常と異なるものを自然の驚異として珍重した各地の宮廷から求められました。当時の宮廷や知識人たちの嗜好と知的関心を物語る作品です。
一方、ボワイーはフランス革命以後19世紀前半を通じ、パリのサロンで人気を博した画家です。彼はパリ市民の風俗や肖像を描く一方、数々のトロンプ・ルイユ(だまし絵)作品によっても知られます。今回購入した作品はまさしく、版画を模したトロンプ・ルイユによる、当時のブルジョワの肖像画です。国立西洋美術館のフランス近代絵画コレクションは、長らく19世紀初頭の作品に欠けていました。本作品はコレクションの欠落を埋める重要な一歩となるとともに、その錯視的効果によって、絵画がもつ魅力を伝えてくれることになります。
このほかにも、 初期イタリア・ルネサンスの典型的な聖母子像の形式を見せるビアージョ・ダントニオ・トゥッチ(1446-1516)の絵画《聖母子と幼児洗礼者聖ヨハネ》、17世紀初頭のミラノで活躍した女性画家フェーデ・ガリツィア(1578-1630)の絵画《ホロフェルネスの首を持つユディト》を購入されており、展示時期は決まり次第お知らせされます。
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