東京藝術大学大学美術館では、「大吉原展 」(主催:東京藝術大学、東京新聞、テレビ朝日)が開催されています。
約10万平方メートルもの広大な敷地に約250年もの長きに渡り続いた幕府公認の遊廓 江戸の吉原は、他の遊廓とは一線を画す、公界としての格式と伝統を備えた場所。武士であっても刀を預けるしきたりを持ち、洗練された教養や鍛え抜かれた芸事で客をもてなし、夜桜や俄など季節ごとに町をあげて催事を行いました。
約250年続いた江戸吉原は、常に文化発信の中心地でもあったのです。
3月にだけ桜を植えるなど、贅沢に非日常が演出され仕掛けられた虚構の世界だったからこそ、多くの江戸庶民に親しまれ、地方から江戸に来た人たちが吉原見物に訪れました。
そうした吉原への期待と驚きは多くの浮世絵師たちによって描かれ、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)らの出版人、文化人たちが吉原を舞台に活躍しました。江戸の吉原遊廓は現代では存在せず、今後も出現することはありません。本展では、今や失われた吉原遊廓における江戸の文化と芸術について、ワズワース・アテネウム美術館や大英博物館からの里帰り作品を含む国内外の名品の数々で、丁寧に検証し、その全貌に迫ります。
東京藝術大学大学美術館で5月19日(日)まで。

勝川春潮《吉原仲の町図》 寛政(1781-1801)前期 大英博物館 ©The Trustees of the British Museum.

本展は三部構成となります。
第一部では、厳選した浮世絵作品を用いて吉原の文化、しきたり、生活などを映像を交えてわかりやすく解説し、導入とします。
第二部では、菱川師宣(ひしかわもろのぶ)、英一蝶(はなぶさいっちょう)、喜多川歌麿(きたがわうたまろ)、鳥文斎栄之(ちょうぶんさいえいし)、酒井抱一(さかいほういつ)らが描いた風俗画や美人画を紹介しながら江戸時代の変遷を辿り、高橋由一の《花魁》(1872年)を経て変容していく近代の様相までを通覧します。

高橋由一《花魁》[重要文化財] 明治5年(1872) 東京藝術大学

第三部では、吉原の五丁町を歩いているように感じられる展示室全体の演出を試みます。浮世絵を中心に工芸品や模型も交えてテーマごとに作品を展示し、季節ごとの年中行事をめぐりながら、客の作法や遊女のファッション、芸者たちの芸能活動を知ることができます。

人形・辻村寿三郎、建物・三浦宏、小物細工・服部一郎《江戸風俗人形》 昭和56年(1981) 台東区立下町風俗資料館 撮影:石﨑幸治、写真提供:三浦佳子

展示室全体を吉原の町に見立て、大門、高札、桜、常燈明、見返り柳など当時のランドマークをめぐりながら、吉原の町の疑似体験ができます。三浦宏氏による間口約3mの総檜造り2階建ての妓楼には、辻村寿三郎の江戸風俗人形23体と服部一郎氏の江戸小物細工約400点が配され、吉原遊廓の世界が現代に蘇ります。

福田美蘭《大吉原展》 2024年 作家蔵

また、現代美術作家・福田美蘭さんの描きおろしである《大吉原展》を展示。本展に出品される作品の数々をモティーフに、花魁や吉原の町並みがモノクロで描かれています。

特設サイト:https://daiyoshiwara2024.jp/
問合せ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)