メニュー

特集! 上野「文化の杜」

Special Topics

「杉戸洋 とんぼとのりしろ」展レポート

2017.09.06

 東京の美術館では初となる杉戸洋の個展「杉戸洋 とんぼとのりしろ」展が、東京都美術館にて開催されています。小さな家や船、空などを描いた絵画やドローイングに加え、ダンボール、糸、発泡スチロール、タイルなど、様々な素材を組み合わせた立体物は、私たちのイマジネーションを大いに掻き立てます。独自の世界観で空間を彩る当展示の見どころを紹介します。

 

杉戸の造り出す
居心地の良いリビングルームへ

 

 愛知県出身の作家、杉戸洋(1970~)。1992年に愛知県立芸術大学美術学部日本画科を卒業後、96年、絵画制作のため渡米し、現在は名古屋を拠点に活動しています。三角や四角、直線を組み合わせたモチーフ、時に淡く、時に強烈な個性を放つ色使い・既成概念に捉われない自由な表現方法は、国内外問わず多くの人を魅了しています。
 近年も宮城県美術館、ベルナール・ビュフェ美術館、豊田市美術館と精力的に展覧会を開催し、好評を得ている杉戸ですが、東京の美術館での個展開催は今回が初となります。

 

 
 今回の展覧会は「とんぼとのりしろ」という少し不思議なタイトルがついています。「とんぼ」とは印刷物を作成する際、印刷の範囲や断裁の場所、紙を折るといった加工の位置を示す目印のこと、「のりしろ」は紙などを貼り合わせるための糊をつける部分を指します。
このタイトルに込めた意味について、杉戸は「東京都美術館の建物は基本的に3m×3mのグリッドの上に黄金比が重ねられ設計されており、じっと眺めていると頭の中にとんぼとなるグリッドがイメージできます。通常は箱の中身が大切で、見えないところなんですけど、その箱を開いたときに見えてくるのりしろ部分のことも忘れていない。そんな気持ちを込めたものです」と語っています。
 
 展示会場となる東京都美術館のギャラリーA・B・Cは、地下に広がる吹き抜けの空間が大きな特徴となっています。ここはかつて彫塑室と呼ばれた場所で、茶色のタイルの床やコンクリートを削ったはつり壁など、建築家・前川國男ならではの独特の質感や佇まいをもっています。杉戸はこの空間を生かし、自分のリビングルームに見立てて、「この空間そのものを綺麗に見せたいと思った」と語っています。
次へ

1 2 3